3. データセンターネットワークアーキテクチャに関する研究

3.1 光通信技術を用いたデータセンターネットワーク構成に関する研究

3.1.1 光パケットスイッチを用いたデータセンターネットワーク構成に関する研究

近年建築が進められている大規模データセンターでは、数千台から数万台の多数のサーバが配置され、サーバ間で連携をとることにより、データの処理が行われている。データセンターで効率的な処理を行うためには、サーバ間に十分な通信帯域を確保する必要がある。そのため、サーバ間に十分な帯域を確保することができるようなネットワーク構成の検討がこれまでも行われていた。しかしながら、従来の電気パケットスイッチを用いた構成では、十分な帯域を確保するためには、消費電力が大きくなってしまう。消費電力を低く抑えつつ、十分な帯域のネットワークを構成する方法として、光パケットスイッチを用いることが考えられる。しかしながら、光パケットスイッチは帯域が大きいため、1 台の故障の影響が大きい。そこで、本研究では、故障が発生しても、サーバ間の接続性を確保しつつ、十分な帯域を確保することができる光パケットスイッチを用いたデータセンターネットワークの構造を提案している。提案する構造では、光パケットスイッチをグループに分け、各グループ内のサーバ数をもとに計算した各グループ間に流れる最大トラヒック量を収容するのに十分な本数のリンクをグループ間に構築する。また、グループ内もサブグループに分け、各サーバーラックから異なるサブグループに属する複数の光パケットスイッチに接続することにより、各サーバーラック間の独立した経路を確保するとともに、サブグループ内を流れるトラヒックを収容するのに十分な本数のリンクをサブグループ内の光パケットスイッチ間に構築する。

シミュレーション評価により、提案するネットワーク構成は、故障の有無によらず、既存のデータセンター向けネットワーク構成で光パケットスイッチを配置した場合よりも、大きな帯域を全サーバ間に確保できることを示した。

[関連発表論文]

3.1.2 経路制御を考慮に入れたデータセンターネットワーク構成に関する研究

データセンター内では、短い間隔で予測不可能なトラヒック変動が発生するため、トラヒック変動に対応しつつ、サーバ間に十分な通信帯域を確保することが必要とされる。そのため、データセンター内では、短い間隔で発生するトラヒック変動に対応しつつ、通信帯域を確保可能な経路制御が必要であり、ネットワーク構成も、そのような経路制御手法が動作可能な構成である必要がある。そこで、本研究では、経路制御手法とネットワーク構成の様々な組み合わせを評価し、トラヒック変動に対応しつつ、多くのトラヒックを収容することができるようなネットワーク構成と経路制御手法の組み合わせを明らかにしている。評価の結果、トラヒック変動に対応するためには、局所的な経路制御が必要であることが確認できた。また、階層的に構築することによりスイッチ間のホップ数を短くしたネットワーク構成において、各スイッチから各階層へのリンク数が均等な構成が、局所的な経路制御を用いた場合に、最も多くサーバ間トラヒックを収容することができることが明らかになった。

[関連発表論文]

3.1.3 光ネットワーク技術を用いたデータセンターネットワーク省電力化のための仮想ネットワーク制御技術に関する研究

データセンター内では、サーバ間の連携により多量のデータを処理しており、データセンターの処理性能を確保するためには、サーバ間を十分な帯域・低遅延で接続できるネットワークを構成する必要がある。一方、データセンターの省電力のためにはネットワーク内の機器数を必要最小限にし、消費電力を抑えることが必要とされる。本研究では、電気スイッチと光スイッチを用いて構成されたデータセンターネットワーク上に、サーバ間に確保可能な帯域といった通信要求を満たしつつ、必要な論理リンク数が少ない仮想ネットワークを構築し、仮想ネットワークに用いられない機器の電源を落とすことにより低消費電力化を達成する手法を提案している。評価結果より、提案手法によって構築された仮想ネットワークは、従来型データセンターネットワークとして提案された構造を仮想ネットワークとして構築した場合の半分のリンク数で、サーバ間に十分な帯域を確保することができることが明らかとなった。

[関連発表論文]