7. 次世代ルーティングアーキテクチャに関する研究

7.1 IPv6ルーティングプロトコルに関する研究

7.1.1 IPv6の利用促進に向けた研究(日本電気株式会社との共同研究)

IPv4 アドレスの新規割り当てが2012年に終了し,アドレス枯渇問題がいよいよ現実的となった現在,IPv6 ネットワークへの速やかな移行が求められている.しかしながら IPv6 移行に際しては,従来の IPv4 からの変化に伴う課題について検討していく必要がある.その一つがアドレス長の変化による影響である.IPv6アドレスは128bitもあり長いために人間がその値を記憶するのは困難である.それに加え自動で生成設定されるアドレスは人間には規則性のない数字の羅列と感じられ,数字表記のIPv6アドレス情報は,IPv4アドレスとは異なり,実質的にほとんど覚えることができない.アプリケーションの引数として人がアドレスをタイプするのも大変煩雑である.別の視点として,IPv6アドレス情報が人に通信状態を伝えるために提示された場合,そのアドレスが実際にどのノードに設定されたものかを人間が理解できないとその情報は役に立たない.覚えることができない あるいは一目で(他のアドレスと同一かどうかなど)見分けることができない 数字表記のIPv6アドレス情報は,結果として実質的にほとんど意味のない情報になってしまっている.また,IPv6では1ノード(インターフェース)に対して複数のアドレス(リンクローカルアドレスに加えグローバルアドレス)を設定するのが一般的であり,アドレスが実際にどのノードに設定されているものかを人が識別するのを一層難しくしている.

本研究では上記の問題を統合的に解決すべく設計実装したAuto Nameと呼ぶ機能について提案を行っている.全てのIPv6 アドレスに対応するAuto Nameと呼ぶネームを自動で生成登録し,これを利用することで上記の問題を解決している.同じノード(インターフェース)に設定された複数のアドレスに対しては同じAuto Name Prefixを用いることでグループ化し,アドレスが実際にどのノードに設定されているのかを分かり易く示すことにも貢献している.Auto Nameは固定長文字列であるため,アドレス表示の際に桁が揃い見やすくなるなどの副次的な効果もある.本研究では Auto Name 機能の設計,実装および評価により,よりエンドユーザが簡便に IPv6 アドレスを取り扱うことができることを明らかにした.

[関連発表論文]